【趣味で始める陶芸入門】日本の陶磁器の産地~六古窯+25ヶ所を紹介

全国の窯場
この記事は約5分で読めます。

日本の焼き物は縄文土器に始まり、その歴史は一万年以上あります。

現在の日本でも陶磁器の生産は続いており、九州・沖縄から東北地方までさまざまな地域でそれぞれの伝統が受け継がれてきました。

そうは言っても、どこでどのような陶磁器が作られているのでしょうか?

900年以上歴史のある産地は6ヶ所、それ以外で伝統的工芸品に指定されている陶磁器の産地は25ヶ所あります。

もちろん個人で制作している人はもっといろんな場所にいるわけですが、ここでは「陶磁器の産地」として挙げられる地域について紹介していきます。

【趣味で始める陶芸入門】日本の陶芸の歴史~縄文からの変遷を解説
普段私たちが使っている陶磁器の器、一体いつくらいから日本で作られるようになったと思いますか?一万六千年ほど前に始まったとされているんです。縄文土器から現在のような器になるまでには、さまざまな技術の進歩や時代ごとの変化がありました。そんな長い歴史を持つ日本の陶芸の歴史について、順に紐解いていきます。

中世から900年以上生産が続いている日本六古窯

日本には、「六古窯(ろっこよう)」と呼ばれる歴史ある陶磁器の産地があります。

六古窯に指定されているのは、中世(平安時代〜室町時代)に始まり現在もなお陶磁器の生産が続いている越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前の6つの産地。

古くから焼き物の町として栄え、その伝統が受け継がれている地域です。

六古窯それぞれの歴史や特徴をお伝えします。

越前焼(えちぜんやき)

福井県越前町で作られる陶磁器を、越前焼と呼びます。

生産が始まったのは平安時代末期とされ、もともと作っていた須恵器に常滑()の焼き物技術を取り入れたのが始まりと言われています。

鉄分の多い土を使うため、表面が赤黒っぽい色や赤褐色となり、硬く焼き締められていることから水漏れしにくいという良さがあります。

釉薬を使わずに焼き、窯の中で薪の灰が溶けて流れる自然釉(しぜんゆう)の独特な風合いも特徴。

壺や甕(かめ)、すり鉢などをメインに作っていましたが、江戸時代後期以降は食器も作られるようになりました。

越前焼は福井を代表するやきもの【全国の焼き物と窯場を紹介】
越前焼(えちぜんやき)は、福井県丹生郡越前町の主に宮崎地区・織田地区で焼かれる炻器を指す。 釉薬を使わずに1300度以上の高温で焼成されるときに薪の灰が器に流れ出し、溶け込む自然釉の風合いで知られる。 備前焼や信楽焼と同じく高温で焼き締めるため、磁器と陶器の中間にあたる炻器と呼ばれる。 越...

瀬戸焼(せとやき)

愛知県瀬戸市の猿投窯(さなげよう)で、9世紀前半に作られ始めたのが瀬戸焼です。

陶磁器を作るための土に恵まれた土地であることや、中国の陶磁器を参考に日用品としての器を作ったことから、日本最大の陶磁器生産地として発展したとされます。

当時の六古窯の中では唯一、釉薬をかけて焼いていた地域。そのため、他の5つの地域の器とは見た目の雰囲気がまったく異なります。

釉薬をかけることで水漏れしにくく、器の強度が上がるため、植物の灰を釉薬として使っていました。

伝統的工芸品としては「瀬戸染付焼」として登録されており、真っ白い磁器に青い呉須(ごす)という絵の具を使って描かれた写実的な絵柄が特徴。

せともので知られる瀬戸焼【全国の焼き物と窯場を紹介】
瀬戸焼(せとやき) 多才な技法を生み出し、やきもの文化を担う国内最大の窯業生産地。 その昔、唯一釉を使ったやきものの焼成に成功した瀬戸焼は、茶陶をはじめ洋食器、日用雑器などいまでも多種多様なうつわを作り続けている。 瀬戸焼は愛知県瀬戸市とその周辺で生産される陶磁器を指す。日本六古窯の一つで...

常滑焼(とこなめやき)

六古窯の中で一番古いのが常滑窯です。愛知県常滑市を中心とした知多半島で作られています。

かつては合計3,000基以上の窯があったとされており、非常に大規模な生産地であったことがわかります。

常滑焼の技術は他の産地にも影響を及ぼしており、全国各地に広く流通していたともされます。

その特徴は、表面の色。

釉薬をかけない焼き締めの器なのですが、土に含まれる鉄分を赤く発色させているため独特の色合いとなっています。

朱泥の急須と言えば常滑焼【全国の焼き物と窯場を紹介】
常滑焼(とこなめやき)は、愛知県常滑市を中心とし、その周辺を含む知多半島内で焼かれる炻器で、日本六古窯の一つ。 常滑焼の歴史 中世の常滑焼 平安時代末期に猿投窯南部の灰釉陶器窯の南下にともない形成された知多半島古窯跡群を母体とし、瓷器系中世陶器の主要生産地となった。 中世の常滑焼の窯...

信楽焼(しがらきやき)

たぬきの置き物で知られる信楽焼は、滋賀県信楽町を中心に生産されたものです。

こちらも常滑焼の技術に影響を受けており、釉薬をかけずに焼くため、自然釉がかかって不均一な模様となるのも特徴。

信楽の土には長石などの石が多く含まれており、焼き上がるとザラザラとした質感になります。

その質感や素朴な雰囲気が、かつての茶人たちに茶道具として愛された理由のひとつです。

スカーレットで注目の信楽焼【全国の焼き物と窯場を紹介】
信楽焼(しがらきやき) 連続テレビ小説「スカーレット」で注目されているやきものの里、信楽。 ドラマは信楽を舞台に、女性陶芸家の波乱万丈な人生を描きました。 物語りでは、主人公の女性がもの作りの情熱と喜びを糧に、天性の明るさでがむしゃらに突き進み、懸命に創り、育て、働く姿を描いています。 ...

 

丹波焼(たんばやき)

平安時代末期から鎌倉時代初期くらいに生まれたとされる丹波焼は、兵庫県の篠山市、三田市、加西市で作られています。

伝統的工芸品としては、「丹波立杭焼(たんばたちくいやき)」という名前で登録されています。

作るための道具として左回転の蹴ろくろが使われるのですが、これは日本の中でも珍しいスタイル。

丹波焼は日常の器がメインで、灰釉や鉄釉を使った飾り気のない、それでいて多様な器が作られています。

丹波焼の産地は兵庫県【全国の焼き物と窯場を紹介】
丹波立杭焼(たんばたちくいやき)は兵庫県篠山市今田地区付近で焼かれる陶器。主に生活雑器を焼いてきた。 丹波焼、または立杭焼ともいう。起源は平安時代にまで遡るといわれ、六古窯の一つに数えられる。 中世の丹波焼の特徴は赤っぽい土肌にかかる、焼き締めによる自然釉に特徴がある。備前焼、信楽焼に比...

備前焼(びぜんやき)

岡山県備前市伊部で作られる備前焼は、岡山県の邑久(おく)と呼ばれる地域に源流があるとされます。

六古窯の中で唯一源流が異なり、須恵器の生産地として有名に栄えていたそうです。

使われている土は「干寄(ひよせ)」と呼ばれていて、伊部地区の田畑の地下から採られる貴重なもの。

掘って集めた土は屋外に積み上げて保管し、数年雨ざらしにしたのち、ようやく使うことができるようになります。

備前焼も釉薬をかけずに自然釉の風合いを楽しむ陶磁器です。

素朴な味わいの備前焼【全国の焼き物と窯場を紹介】
備前焼(びぜんやき) 桃山時代の茶人たちをとりこにした無釉、焼き締めの素朴な味わい 安土桃山時代には茶陶を制作して黄金期を築いた以前焼は、絵付も釉も使わないのが特徴。備前の土を登り窯で焼き締める多彩な表情が魅力的だ。 備前焼は岡山県備前市周辺を産地とする炻器(焼き締め)で、日本六古窯の一つ...

旅する、千年、六古窯 - 日本六古窯 公式Webサイト [日本遺産] -
日本六古窯 公式Webサイト。六古窯とは、古来の陶磁器窯のうち中世から現在まで生産が続く代表的な6つの窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)の総称。本サイトは、各古窯の現在に至る変遷を紐解き、関連資料をアーカイブ、発信していきます。

伝統的工芸品の陶磁器生産地は六古窯+25ヶ所

日本の伝統的工芸品に指定されている陶磁器は31種類あって、先ほど紹介した六古窯以外にも25の地域で伝統的工芸品としての陶磁器が作られているんです。

その25の焼き物と産地はこちら。(カッコの中が産地)

  1. (福島県)
  2. 会津本郷焼(福島県)
  3. 笠間焼(茨城県)
  4. 益子焼(栃木県)
  5. (石川県)
  6. 美濃焼(岐阜県)
  7. 赤津焼(愛知県)
  8. 萬古焼(三重県)
  9. 伊賀焼(三重県)
  10. 京焼/清水焼(京都府)
  11. 出石焼(兵庫県)
  12. 石見焼(島根県)
  13. (山口県)
  14. 大谷焼(徳島県)
  15. 砥部焼(愛媛県)
  16. 小石原焼(福岡県)
  17. 上野焼(福岡県)
  18. 伊万里/有田焼(佐賀県)
  19. 唐津焼(佐賀県)
  20. 三川内焼(長崎県)
  21. 波佐見焼(長崎県)
  22. 天草陶磁器(熊本県)
  23. 薩摩焼(鹿児島県)
  24. 壷屋焼(沖縄県)

陶磁器は、すべての都道府県で作られているわけではありません。

それぞれの地域へ出向いて、焼き方や模様に特徴を見比べてみるのも面白いですよ。

【趣味で始める陶芸入門】陶磁器の見方、選び方、使い方のポイント
焼き物と一口に言っても陶器や磁器、炻器など、様々な種類があります。普段は何気なく使っているその食器、陶器か磁器かによって特徴がありますし、使うときやお手入れで注意したいポイントがあるんです。せっかく手に入れた器を長くきれいに使っていくためにも、その特徴と使うときの注意点を覚えておきましょう!

まとめ

古くは縄文時代から作られている日本の焼き物。

その中でも900年以上の歴史を持つ六古窯では、自然な風合いの仕上がりが特徴で今もなおファンが多くいます。

産地では定期的に陶器祭りを開催している場所もありますので、ぜひ現地でそれぞれの違いを手にとって確かめてみてください!

文:ユキガオ