吉野浩志さんの作陶展
陶芸家・吉野浩志さんの個展 “吉野浩志 作陶展” が、2020年3月19日(木)から3月25日(水)まで、東京新宿の京王百貨店6階ギャラリーで開催された。
私は初日と最終日の1日前に会場を訪ねました。
陶芸家の吉野浩志さんは、岐阜県可児郡御嵩町で穴窯焼成で作陶している陶芸作家さんです。
焼き締め陶のお好きな方には、ぜひオススメの展覧会です。
NHKの連ドラ『スカーレット』で一躍有名になった穴窯焼成ですが、「手間がかかる」「時間がかかる」「お金がかかる」の3点から、いまではこの焼成方法で作品を作っている陶芸家はほとんどいません。
よほど焼き締め(炻器)が好きでないとやらない、割に合わない製法です。
吉野さんは現在では珍しく、自然釉にこだわる数少ない陶芸家です。
吉野さんの作陶スタイル
「自然に寄り添う暮らしの中で、土を求め採り、窯を築き、薪を割り、窯を焚く、万里一空を常とし、作陶する」
吉野さんの陶芸に対する思いです。
吉野さんは、美濃の幸兵衛窯にて、加藤卓男、七代加藤幸兵衛に師事しましたが、作風は全く異なります。
修行時代より穴窯による薪の炎と、土の個性の融合に魅力を感じた彼は、独立後も自然に寄り添いながら、土を求め採り、炎と語り合うスタイルを追求し続けています。
信楽焼という炻器は、人工釉で覆われた陶器と異なり、アカマツの灰が燃えて降りかかる自然釉の美しさに魅力があります。
吉野さんは窯を暖めるのに1日、窯焚きに6日をかけているそうです。
ガス窯、電気窯で本焼きを半日で仕上げるのとは全く違うわけです。
吉野浩志さんの略歴
- 昭和39年 静岡県焼津市生まれ
- 昭和58年 岐阜県立多治見工業高等専攻科卒業
幸兵衛窯入社
人間国宝 加藤卓男、七代加藤幸兵衛
両先生に師事 - 平成 7年 富嶽ビエンナーレ入選
- 平成 8年 同賞入選
- 平成22年 御嵩町にて独立
以後、独自の設計により薪窯を多数築窯 - 平成27年 西武池袋店にて三人展
- 平成28年 松坂屋名古屋店にて個展
- 平成29年 京王百貨店新宿店にて個展
- 平成30年 ほの国百貨店にて個展
京王百貨店新宿店にて第二回個展 - 令和 元年 ほの国百貨店にて第二回個展
松坂屋名古屋店にて第二回個展
焼き締めとは
焼き締めでできるうつわは炻器(せっき)とも呼ばれ、釉薬を使わずに、穴窯、登り窯などで焼く手法です。
薪を使うこと、焼き時間が長いこと、多量生産に向かないこと、製品としては、均一性のある製品ができないことなどから、現在の陶芸ではガス窯、電気窯、石油窯を用い、釉薬をかける手法が主流です。
しかしながら、穴窯は、自然釉がかかり、味わいのある作品が焼けることから、魅力のある焼き方です。
私もその魅力にとらわれ、陶芸仲間と年に1、2回師事する陶芸家の穴窯で、焼き締めの魅力を堪能しています。
焼き締めでできる景色
- 緋色(ひいろ):土の中の鉄分が 炎の 温度、酸化還元の状態などで 焼物の景色を作っていく
- ビードロ:燃焼した 薪の灰が多量にかかり、ガラス状になり、流れ、玉となったもの
- 胡麻:降りかかった、薪の灰が 溶けて 胡麻のような模様となったもの
- 牡丹:餅道具土などを置いて焼くとその部分に、灰がかからないため、炎と灰の影響うけず素焼きに近い色の状態が残る
- 灰かぶり:燃焼している薪近くにて 焼いた場合に、おきに埋もれて焼けたため、灰が溶けきらない状態にて焼けたもの
文:小暮貢朗