プロの陶芸家にインタビュー~陶芸家 船越保さん【陶芸を語る】

インタビュー

この記事は読むのに、約 4 分かかります。

スポンサーリンク

自然と対話し、自然をそのままくりぬいたような造形美を追求する孤高の陶芸家

船越保(ふなこし たもつ)さんが作るうつわの特徴の一つが、その流れるような造形美にある

ながく工業デザイナーとして活躍した経験から、自然に身に着いたものと思われる。

作品は大きく信楽焼きと黒陶に分けられる。自然を愛し、自然と日々対話を繰り返す彼の姿勢からか、作品には自然をそのままくり抜いたような花入れが多い。

自己を主張するうつわではなく、周囲と調和するうつわづくりを目指している。

陶芸家 船越保5つのこだわり

  1. 花器と活ける草花をケンカさせず、互いに引き立たせる
  2. うつわづくりのイメージは、自然を切り取る
  3. 非効率でも薪窯焼成で、自然釉で仕上げる
  4. 日々の山野散策に作陶のヒントあり
  5. 私欲を捨て、穏やかな心で土と向き合う

陶芸家になるまでの道のり

40歳を過ぎてから陶芸を始めたそうですが、それまでは何をされていたのですか?

大学入試の直前で父が亡くなったため、進学を断念して地元の酒造会社に就職しました。

22歳で結婚し3人の子供を養うため、商品企画の会社に転職し、車の部品からコーヒーメーカーまで様々な商品の通販企画を手がけました。

その後、知人と数人でモータースポーツ用バイクやクルマのデザイン、モデリングをする会社を立ち上げましたが、3年で事業に失敗、最終的に自分一人がすべての借金を背負うことになってしまいました。

フリーでクルマの造形デザインの仕事を続け、何とか40歳で借金を完済することができました。そのころ出会ったのが、やきものです。

若いうちは画家志望で、音の世界を絵画で表現したいと考えていました。

あの時偶然やきものに出会い、心の片隅に眠っていた芸術への想いがよみがえり、すぐに陶芸にのめり込んでしまいました。

陶芸家・船越保氏の作品 大壺

信楽焼との運命的な出会い

それは都内で開催された「京都で発掘された古信楽焼きの展示会」でした。そこで見た古いやきものの造形がずっと頭から離れませんでした。

ある日バイクで八王子山中をツーリングしていたときに偶然薪窯を見つけ、そこで作陶する陶芸家に声を掛けさせていただいたのが、すべてのはじまりでした。

電気窯、ガス窯にはない薪窯の持つ魅力に引かれ、いつしかその陶芸家のもとに通い続けました。

40歳を過ぎてから陶芸を始めたこともあり、気に入った調合にたどり着くまで長い経験と年月がかかる釉薬は使わずに、薪の炎や灰で色合いや風合いを出す自然釉を選びました。

最初は仕事をしながらの作陶でしたが、45歳で陶芸一本に専念することにしました。

毎日ろくろを回すのが楽しく、まるで前世でも焼きものづくりをしていたのではないかと感じました。

薪窯焼成にこだわる

電気窯やガス窯を使う陶芸家がほとんどのなか、穴窯で焼成する作家は珍しいですね。穴窯は焼き上げるのに何日もかかり、手間と経費がバカにならないのではないですか。

確かに効率的ではありませんが、自然釉にはそれだけの価値があります。仕上がりを完全にコントロールできませんが、あらかじめ予測し、偶然の美を演出するのです。

炎や灰がもたらす偶然を誘発するため、あれこれと工夫するところに薪窯の醍醐味があります。

炎が直接、土肌に当たり、薪の灰が降りかかって自然釉となり、予想外の効果が生まれます。いにしえの茶人はそれを「景色」と呼び、「わび・さび」として評価しました。

薪窯には登り窯と穴窯があります。登り窯は部屋をいくつも連ねた長い窯ですが、穴窯は部屋がひとつで、炎が焚き口から煙出しまで一直線に流れます。

5日、10日と長く焼成する人もいますが、わたしは集中力を高め3日間で焚き上げています。

信楽焼と黒陶が作品の2本柱

信楽焼きはやきものを土器、陶器、炻器、磁器と分類すると、炻器(焼き締め)に当たります。

焼成温度を高くできるアカマツの薪で1250℃で焼き上がるので、陶器のように釉で器を覆わなくても水は漏れづらくなります。

黒陶は土器に近いです。800℃から900℃で真っ赤になった状態で窯から引っ張り出し、おがくずの中で一気に炭化させます。

成形の際に器の表面をピカピカに磨きあげるのは、カーボンを土肌に入ることで水漏れを防ぐためでもあります。

陶芸家・船越保氏の作品 椿と梅陶芸家・船越保氏の作品 花入れ

 信楽焼も黒陶も普通の陶器と比べ保湿力があります。器自体が水を吸い、器がしっとりするからです。

特に黒陶は黒い釉薬を使った器とは違い、活けた花がなかなか枯れませんね。挿した草花が長持ちするのは、器自体がしっとりと水を吸い込み、保水力があるためです。

つまり器の中の水が外気と呼吸し合うことで、水がいつも新鮮で腐りづらいということかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました