陶芸作家としての売りは? こだわりは?
うつわの形はきれいなフォルムを意識しています。
例えば、うつわをテーブルに置いたときに高台のふちに線ができないように工夫しています。線が見えることでかっこが悪くなります。そこがこだわりです。
そのためにまず高台全体に釉を施し、焼く際に窯に引っ付かないように浮かせて焼きます。その後に高台の内側を削って完成させています。
見た目が良く、さらに使い勝手のよいうつわ作りが目標です。
ラスター彩を使っているのは、私がもともとキラキラしているものが好きだったことと、やきものでしか表せない質感を出したかったためです。
ラスターは貝の内側みたいな色で、ガラスでもラスター彩の色彩は出せません。
うつわ全面をラスター彩の一色で彩色しているのは、ラスター彩自体がわりとうるさい色調なので、模様や柄は使いたくないからです。
ラスター彩を使うデメリットは、チタンは体に安全な金属なのですが、食器として使うのに抵抗感を持つ方がいらっしゃることです。
鉛ではないので安全なのですが、安全なイメージがないのも事実です。釉薬として値段が高いのも事実です。
ラスター彩はコスト面を考えると大量生産には向きません。また誰にでも手に入る釉薬なので、使う際はそれなりの技術、センスで差別化することが必要です。
私が作品に模様をつけないのも芸術性を考え、アマチュアっぽく見えない様に工夫しているからです。
また私がラスター彩の単色にこだわるのは、どこから引っ張ってきたかわからないような作品に斬新さを感じないことと、作品がごちゃごちゃし過ぎないように気を付けているからです。シンプルさは大事です。
将来陶芸家を目指す人に一言
知名度がない陶芸家の収入は多くはありません。生活は厳しいですが、アルバイトでやりくりすることなく、作陶に専念しています。
陶芸と向き合い、やり続けることが大事だと思います。続けることで上達します。アルバイトに逃げない方がよいです。
アルバイトをするとそっちでお金が入ってくるので精神的な安心感はありますが、気が引き締まりません。自分の作品が時代に合っているのか分からず、先が読めなかったりすることがあります。
作りたい作品を作っていても時代の流れに合わずに売れなかったりすもします。陶芸家も時代の流れを読むことが大事なのではないでしょうか。
私は作りたいものを作るのではなく、自分でもほしいと思う作品をつくるように考えを変えました。安土桃山時代には、織部焼もある意味変わった最先端の作風でした。
現代に生きる一人の陶芸家として、自分の仕事を客観的な見ること、また自分のことを信じることが大事ではないでしょうか。
陶芸家 坂本新(Arata Sakamoto) プロフィール
1988年 千葉県船橋市生まれ
2009年 愛知県立瀬戸窯業高等学校 陶芸専攻科修了⇒ 瀬戸市内にて制作
2012-13年 渡英(地元作家との交流、学生への陶芸指導)
2013-15年 石垣焼窯元で職人として勤務(沖縄県石垣市)
2015年-現在 笠間市内にて制作
連絡先
E-mail:aratasakamoto1988918@gmail.com
作品
ライターコラム
陶芸家の坂本新さんは、ハングリー精神と作陶への意欲が強い将来ますます活躍が楽しみな作家さんです。
今後の活躍が楽しみなことと、数年後にまた是非インタビューをしたいと思いました。