普段目にする陶器は、すでに焼かれて完成した状態のものです。
そんな陶器は、実は1日では完成しません。1ヶ月近くかかる場合もあります。
それは、完成するまでに様々な工程があることと、土の性質上「急ぐのはNG」であることが関わっています。
では、実際どれくらいの工程が必要なのでしょうか。
今回は、陶器の作り手でもある筆者が、自分の作品の写真とともに陶器の制作工程をお伝えします。
※写真は一連の行程ではないため、参考としてご覧ください。
ステップ1. 土を練る
陶芸用の土は、陶芸用品店や原料屋さんで購入することができます。
しかしその土をそのまま使うわけではありません。
買ったばかりの土は、水分量が表面と中央とで均一になっておらず、そのまま成形すると不具合の原因になりますので、まず「荒もみ」といってざっくり土をもみます。
その次に、「菊練り」という方法(写真参照)で土の中に入った空気を抜いていきます。
陶芸では「菊練り三年」と言われることも多く、菊練りを習得するためにはかなりの練習が必要なのです。
なかなか体力がいる作業なので、初心者がぶつかりやすい壁でもあります。
ステップ2. 土を成形する
菊練りを終えて土の準備ができたら、ようやく成形に入っていきます。
成形方法は大きく4つあります。
- 電動ろくろ
- 手びねり
- タタラ
- 型
作りたい器やデザイン、装飾に合わせて成形方法を選びます。写真は電動ろくろで作っているところ。
ここでほぼ形を作り上げます。
ステップ3. 乾燥させる
成形したばかりだと、まだ土は乾いていません。強く触ったり指を引っ掛けたりすると、簡単に変形してしまいます。
この後のステップ4で削る作業をするためには、一旦乾かす必要があるのです。
ただし、あまり乾かしすぎると削ることが難しくなりますし、乾きが不十分だと削りにくかったり削っている最中に変形させてしまったりと、失敗の原因に。
また一気に乾かそうとすると、歪むこともあります。
こまめに様子を見ながらゆっくり乾かしていくのが大切です。
ステップ4. 高台を削る
適度に乾燥したら、次は高台部分を削り出していきます。
削り方は人や地域によってさまざまなのですが、筆者の場合は「しった」と呼ばれる土台に器を伏せるように乗せて削っています。
この時に、削りの模様である「しのぎ」などを入れたり、マグカップの取っ手をつけたりします。
「白化粧」を掛けたり、「イッチン」などの装飾を行うのも、素焼き前の状態であることが多いです。サインの判子を押すのもこのタイミング。
このあと、再び乾燥させます。
ステップ5. 乾燥させて素焼きする
続いて、700度〜800度くらいの温度で一度焼きます。
このとき、土が完全に乾いていないと焼いている最中に土の中の水分が水蒸気爆発を起こすことがありますので、確実に乾かすのが重要。
また中が空洞の形の場合、空気の逃げ場所がなくて爆発することもありますので、どこかに空気穴を開けるのも忘れないようにします。
ステップ6. 絵付けをする
絵付けなどの装飾は素焼きが終わったタイミングで行い、「下絵付け」と呼ばれます。
写真のように、呉須と呼ばれる絵の具で模様を書いたり、カラフルな下絵の具で装飾したり…
形はもちろんですが、絵付けによってもさまざまなデザインの器を作り出すことができますので、面白い作業です。
もちろん、絵付けをしない器もありますので、その場合はこのステップを飛ばします。
ステップ7. 釉薬を掛ける
焼きあがった器の表面がつるんとしていたりスベスベしているのは、釉薬を掛けているから。
素焼き(必要に応じて絵付けも)をした器に釉薬を掛けていきます。掛けるときは手で持ってかけるか、柄杓などを使ってかけることが多いです。
他にも内側と外側で掛け分けたり、2種類を重ねて掛けたり、スプレー状に吹き掛けたり…さまざまな手法があります。
釉薬は色や質感などさまざまな種類がありますので、欲しい色があれば自分で調合して作ることも。
ステップ8. 本焼きをする
釉薬を掛けたら、いよいよ本焼きです。
土の材質にもよりますが、1200度〜1300度程度の高温で焼くのが一般的。
焼く窯にも
- 薪窯
- ガス窯
- 灯油窯
- 電気窯
など種類があります。
信楽や備前のような陶器の産地は、伝統的な穴窯に薪を入れて焼いていますが、家庭用電源で焼くことができる電気窯などもありますので、必要なサイズや焼きたいものの雰囲気に合わせて選ぶといいでしょう。
金や銀、赤などの上絵付けを行う場合は、本焼きしたものに上絵の具で絵付けを行い、750度〜850度程度で再び焼きます。(絵の具によって温度調整が必要です)
陶磁器を作る工程のまとめ
陶器ができあがるまでの工程をまとめると…
- 土を練る
- 土を成形する
- 乾燥させる
- 高台を削る
- 乾燥させて素焼きする
- 絵付けをする
- 釉薬を掛ける
- 本焼きをする
といった流れが一般的です。
ひとつの器ができあがるまでに時間がかかる、と言われるのがよくわかるかと思います。
土は無理やり形を変えたり乾燥させたりすると、歪みが生じて狙った形にならないこともあります。
そのため、じっくり土の様子を見ながら工程を進めていくことが肝心なのです。
また、地域や装飾方法によってはこの工程通りでない場合もあります。
それも陶芸の面白さですので、色々なやり方を実践し、自分らしい陶器を作ってみてくださいね。
文:ユキガオ