【趣味で始める陶芸入門】陶器の工程~ 陶器ができるまでの流れを解説

注目記事
この記事は約5分で読めます。

普段目にする陶器は、すでに焼かれて完成した状態のものです。

そんな陶器は、実は1日では完成しません。1ヶ月近くかかる場合もあります。

それは、完成するまでに様々な工程があることと、土の性質上「急ぐのはNG」であることが関わっています。

では、実際どれくらいの工程が必要なのでしょうか。

今回は、陶器の作り手でもある筆者が、自分の作品の写真とともに陶器の制作工程をお伝えします。

※写真は一連の行程ではないため、参考としてご覧ください。

【自宅で始める陶芸】役に立つYouTube陶芸チャンネル5選
速く陶芸を上達したいなら、陶芸教室だけでなくYouTubeで予習、復習すれば、数倍の速さで上達することができます。陶芸に関する動画の中で、ここでご紹介する5つのチャンネルは、それぞれの陶芸家が自身の体験をもとに作成した、陶芸入門から中級までの動画です。

ステップ1. 土を練る

陶芸用の土は、陶芸用品店や原料屋さんで購入することができます。

しかしその土をそのまま使うわけではありません。

買ったばかりの土は、水分量が表面と中央とで均一になっておらず、そのまま成形すると不具合の原因になりますので、まず「荒もみ」といってざっくり土をもみます。

その次に、「菊練り」という方法(写真参照)で土の中に入った空気を抜いていきます。

陶芸では「菊練り三年」と言われることも多く、菊練りを習得するためにはかなりの練習が必要なのです。

なかなか体力がいる作業なので、初心者がぶつかりやすい壁でもあります。

ステップ2. 土を成形する

菊練りを終えて土の準備ができたら、ようやく成形に入っていきます。

成形方法は大きく4つあります。

  1. 電動ろくろ
  2. 手びねり
  3. タタラ

作りたい器やデザイン、装飾に合わせて成形方法を選びます。写真は電動ろくろで作っているところ。

ここでほぼ形を作り上げます。

【趣味で始める陶芸入門】陶芸体験~作りやすいオススメの形と作り方
初めて陶芸をするという方にオススメの形と作り方を紹介します。まず事前にそのお店のホームページなどで「どんなものが作れるのか?」と調べておくと安心です。とりあえず自分で何か作ってみたいという場合は、ご飯茶碗・湯のみ・小鉢のどれかを作ってみてください。電動ろくろも面白いですが、最初は手びねりを試してみるのがおすすめです。

ステップ3. 乾燥させる

成形したばかりだと、まだ土は乾いていません。強く触ったり指を引っ掛けたりすると、簡単に変形してしまいます。

この後のステップ4で削る作業をするためには、一旦乾かす必要があるのです。

ただし、あまり乾かしすぎると削ることが難しくなりますし、乾きが不十分だと削りにくかったり削っている最中に変形させてしまったりと、失敗の原因に。

また一気に乾かそうとすると、歪むこともあります。

こまめに様子を見ながらゆっくり乾かしていくのが大切です。

ステップ4. 高台を削る

適度に乾燥したら、次は高台部分を削り出していきます。

削り方は人や地域によってさまざまなのですが、筆者の場合は「しった」と呼ばれる土台に器を伏せるように乗せて削っています。

この時に、削りの模様である「しのぎ」などを入れたり、マグカップの取っ手をつけたりします。

「白化粧」を掛けたり、「イッチン」などの装飾を行うのも、素焼き前の状態であることが多いです。サインの判子を押すのもこのタイミング。

このあと、再び乾燥させます。

【趣味で始める陶芸入門】陶土の種類~知っておきたい6種の土の特徴
陶芸用の土は、細かく分けるとたくさんの種類があります。それぞれの産地で採れる土が違ったり、原料屋さんでオリジナルブレンドをしていることもあります。ですが、大まかに分類してみればシンプルなので、陶芸初心者の人にまず覚えてほしい土の種類、白土、黒土、赤土、磁器土、半磁器土、鍋土の6つをご紹介します。

ステップ5. 乾燥させて素焼きする

続いて、700度〜800度くらいの温度で一度焼きます。

このとき、土が完全に乾いていないと焼いている最中に土の中の水分が水蒸気爆発を起こすことがありますので、確実に乾かすのが重要。

また中が空洞の形の場合、空気の逃げ場所がなくて爆発することもありますので、どこかに空気穴を開けるのも忘れないようにします。

ステップ6. 絵付けをする

絵付けなどの装飾は素焼きが終わったタイミングで行い、「下絵付け」と呼ばれます。

写真のように、呉須と呼ばれる絵の具で模様を書いたり、カラフルな下絵の具で装飾したり…

形はもちろんですが、絵付けによってもさまざまなデザインの器を作り出すことができますので、面白い作業です。

もちろん、絵付けをしない器もありますので、その場合はこのステップを飛ばします。

ステップ7. 釉薬を掛ける

 

焼きあがった器の表面がつるんとしていたりスベスベしているのは、釉薬を掛けているから。

素焼き(必要に応じて絵付けも)をした器に釉薬を掛けていきます。掛けるときは手で持ってかけるか、柄杓などを使ってかけることが多いです。

他にも内側と外側で掛け分けたり、2種類を重ねて掛けたり、スプレー状に吹き掛けたり…さまざまな手法があります。

釉薬は色や質感などさまざまな種類がありますので、欲しい色があれば自分で調合して作ることも。

【趣味で始める陶芸入門】釉薬の作り方~特徴や種類、選び方のポイント
釉薬は「ゆうやく」と読んだり「うわぐすり」と読んだりしますが、どちらも意味は同じで、陶磁器の表面をコーティングするためのもの。釉薬は陶磁器の表面をコーティングするものなので、作品の印象を大きく左右するものでもあります。どんな釉薬があってどのような特徴を持っているのかを知っておくことは、陶磁器を作る上でとても大切です。

ステップ8. 本焼きをする

釉薬を掛けたら、いよいよ本焼きです。

土の材質にもよりますが、1200度〜1300度程度の高温で焼くのが一般的。

焼く窯にも

  • 薪窯
  • ガス窯
  • 灯油窯
  • 電気窯

など種類があります。

信楽や備前のような陶器の産地は、伝統的な穴窯に薪を入れて焼いていますが、家庭用電源で焼くことができる電気窯などもありますので、必要なサイズや焼きたいものの雰囲気に合わせて選ぶといいでしょう。

金や銀、赤などの上絵付けを行う場合は、本焼きしたものに上絵の具で絵付けを行い、750度〜850度程度で再び焼きます。(絵の具によって温度調整が必要です)

【趣味で始める陶芸入門】焼成方法の移り変わり~古墳時代から現代まで
陶磁器はやきものと呼ばれるように焼成が一番重要な工程です。窯(かま)はいつ頃から使われるようになったのでしょうか? その起源は古墳時代後期までさかのぼり、穴窯がろくろといっしょに朝鮮半島から伝えられたと言われています。縄文時代の野焼きから現代のガス窯、電気窯まで焼成方法の移り変わりを追ってみます。

陶磁器を作る工程のまとめ

陶器ができあがるまでの工程をまとめると…

  1. 土を練る
  2. 土を成形する
  3. 乾燥させる
  4. 高台を削る
  5. 乾燥させて素焼きする
  6. 絵付けをする
  7. 釉薬を掛ける
  8. 本焼きをする

といった流れが一般的です。

ひとつの器ができあがるまでに時間がかかる、と言われるのがよくわかるかと思います。

土は無理やり形を変えたり乾燥させたりすると、歪みが生じて狙った形にならないこともあります。

そのため、じっくり土の様子を見ながら工程を進めていくことが肝心なのです。

また、地域や装飾方法によってはこの工程通りでない場合もあります。

それも陶芸の面白さですので、色々なやり方を実践し、自分らしい陶器を作ってみてくださいね。

文:ユキガオ

【趣味で始める陶芸入門】陶芸4つの基本~成型方法の特徴などを紹介
「陶芸を始めよう」と思ったとき、どんな作り方をイメージしますか?電動ろくろ?ひも状の土を手で積んでいく方法?どちらも正解ですが、陶芸では大きく4つの成型方法があります。手びねり、ろくろ、タタラ、鋳込みです。この4つの手法を組み合わせて幅広い作品を作りましょう。それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。