緋色(スカーレット)に輝く信楽焼の魅力とは?
NHKの連続テレビ小説「スカーレット」をご覧になり、やきものにご興味を持たれた方がいらっしゃると思います。
私はひんやりした柔らかい陶土に触れると、何故か心がリラックスします。
陶芸を始めて10年以上になりますが、あの柔らかい陶土が、熱を加えることで硬いまったく別のものに変わるのが、今でも不思議でたまりません。
私は単身赴任の時に陶芸を始めたのですが、陶芸教室に通うのは、2年で飽きてしまいました。
電動ろくろで成型し、人工釉をかけ、電気窯で焼成するのでは、ありきたりのうつわしかできません。
そう思っている時に出会ったのが、うつわの表面に緋色が入った信楽焼でした。
信楽焼は、陶器ではなく炻器(焼き締め)だった!
信楽焼は備前焼と同じく、やきものの分類としては炻器(せっき)に属します。
焼成温度が低い順に並べると、土器、陶器、炻器、磁器の順です。
炻器の焼成温度は1100~1250度と高く、陶器に比べると磁器のように硬く焼き締まります。
このため炻器は焼き締めや半磁器とも呼ばれ、陶器と磁器の中間的な性質を持つやきものです。
信楽焼の特徴とは?
信楽焼のスカーレット(緋色)は、高温で焼成することで、土中の鉄分が赤く発色することでできあがります。
そのほか、灰がふりかかりできる緑色のビードロ釉、灰を被ることで青や紫の焦げが出たりと、信楽焼は自然と偶然が織りなす芸術作品です。
「信楽焼は炎の芸術」と言われるのは、このような理由からです。
私は自分で作った信楽焼の花入れを家で使っていますが、市販のものと違って、花が長持ちします。
全面を釉薬で覆う陶器や磁器と違い、自然釉で焼成した信楽焼は、うつわ自体が呼吸するので、中の水が腐らないからです。
スカーレットの緋色に魅せられて
いまは、薪を使い穴窯や登り窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。
松やにが多く、焼成温度の高い赤松は入手が難しく、また穴窯は焼成に時間がかかるため、手間と時間がかからない電気窯とガス窯が一般的です。
「スカーレット」で使われている穴窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。
私は滋賀の信楽焼の窯元を何度か訪ねるうちに、信楽焼きの緋色にすっかり魅せられてしまいました。
その窯元では、蛇窯で焼いたときが、特に鮮やかな緋色(火色)が出るそうです。
その後、東京で信楽焼を焼ける穴窯はないか探し、やっと見つけることができました。
ある雑誌の「東京で穴窯焼成する陶芸家」という特集を見て、八王子で信楽焼や黒陶を焼く陶芸家の船越保さんを知りました。
東京で信楽焼を焼ける穴窯を発見!
その後、船越さんの陶房に通い続け、1年に2回ほどのペースで、穴窯で窯焚きをしています。
船越さんが主宰する薪窯塾の仲間が手分けして、徹夜で窯焚き、火の管理をしています。
金曜の午前中に火入れをし、日曜日の夕方、もしくは月曜の朝まで焚き、その後温度を徐々に下げています。
燃料には赤松の薪を使い、1250度まで窯の温度を上げます。
1週間後の窯出しをしますが、どんな作品ができているか、窯出しが一番楽しみな瞬間です。
窯から出してみないと出来栄えがわからないところに、信楽焼の魅力があります。
私のような素人で、成型が下手でも、窯焚きの具合でうつわに自然釉が降りかかり、面白い景色が表れるときがあります。
まさに信楽焼の真骨頂です。
NHKの朝ドラ「スカーレット」で陶芸に興味を抱き、穴窯を体験したいと思われた方、東京でもチャレンジできますよ。
スカーレットの緋色が、なかなか出てこない !?
でも実際には、狙ったスカーレット色のうつわには、なかなかお目にかかれないのが実情です。
でも、そこが信楽焼の面白いところで、最終的には炎と灰が織りなす偶然に委ねるしかありません。
次回はもっと素敵なうつわを作ろうと、意気込んでいます。
信楽焼をつくってみませんか!
NHKの連続テレビ小説、「スカーレット」の世界を肌で感じたいという方は、事前に船越保さんへ直接、見学や陶芸体験を申し込んでください。
船越さんのお人柄から、快く引き受けてくれると思います。JR八王子駅からバスで40分です。
連絡先・場所:無量庵陶房・自在窯・薪窯塾
〒193-0801 東京都八王子市川口町3382
電話:042-654-8972(陶芸家 船越保)
船越さんは、おもに花入れを中心に作陶しており、作品を常時Facebookやインスタグラムにアップし、更新しています。
彼の信楽焼の作品をご覧になりたい方は、下記アドレスをご覧ください。
文:小暮貢朗