【趣味の陶芸】私のスカーレット穴窯体験~信楽焼に挑戦しませんか?

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自宅庭にたたずむ筆者手作りのお地蔵さん

緋色(スカーレット)に輝く信楽焼の魅力とは?

NHKの連続テレビ小説「スカーレット」をご覧になり、やきものにご興味を持たれた方がいらっしゃると思います。

私はひんやりした柔らかい陶土に触れると、何故か心がリラックスします。

陶芸を始めて10年以上になりますが、あの柔らかい陶土が、熱を加えることで硬いまったく別のものに変わるのが、今でも不思議でたまりません。

私は単身赴任の時に陶芸を始めたのですが、陶芸教室に通うのは、2年で飽きてしまいました。

電動ろくろで成型し、人工釉をかけ、電気窯で焼成するのでは、ありきたりのうつわしかできません。

そう思っている時に出会ったのが、うつわの表面に緋色が入った信楽焼でした。

信楽焼は、陶器ではなく炻器(焼き締め)だった!

信楽焼は備前焼と同じく、やきものの分類としては炻器(せっき)に属します。

焼成温度が低い順に並べると、土器、陶器、炻器、磁器の順です。

炻器の焼成温度は1100~1250度と高く、陶器に比べると磁器のように硬く焼き締まります。

このため炻器は焼き締めや半磁器とも呼ばれ、陶器と磁器の中間的な性質を持つやきものです。

【趣味で始める陶芸入門】やきものの種類~ その違いと特徴を解説
やきもの種類は4つ。陶器、磁器、炻器(せっき)、土器です。①陶器は吸水性があり、温かみがある。美濃焼や瀬戸焼、益子焼、笠間焼、唐津焼が有名。②磁器は石から作られ、白くて硬い。有田焼、京焼、九谷焼が有名。③炻器は土をかたく焼き締めたもの。信楽焼、備前焼、丹波焼が有名。④土器は低温で焼かれたもろい焼き物。園芸用の鉢など。

信楽焼の特徴とは?

信楽焼のスカーレット(緋色)は、高温で焼成することで、土中の鉄分が赤く発色することでできあがります。

そのほか、灰がふりかかりできる緑色のビードロ釉、灰を被ることで青や紫の焦げが出たりと、信楽焼は自然と偶然が織りなす芸術作品です。

「信楽焼は炎の芸術」と言われるのは、このような理由からです。

私は自分で作った信楽焼の花入れを家で使っていますが、市販のものと違って、花が長持ちします。

全面を釉薬で覆う陶器や磁器と違い、自然釉で焼成した信楽焼は、うつわ自体が呼吸するので、中の水が腐らないからです。

【信楽の窯元巡り】スカーレットの穴窯を巡る窯元散策のコツ
NHKの連続テレビ小説 『スカーレット』で注目されている信楽のまち。ドラマはやきものの里、信楽を舞台に、女性陶芸家の波乱万丈な人生を描きました。信楽焼は日本六古窯のひとつに数えられ、古くから日常に関わり歩んできたやきものです。その素朴な風合いは、いにしえの茶人たちを魅了しました。私のお気に入りは高橋楽斎窯です。

スカーレットの緋色に魅せられて

いまは、薪を使い穴窯や登り窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。

松やにが多く、焼成温度の高い赤松は入手が難しく、また穴窯は焼成に時間がかかるため、手間と時間がかからない電気窯とガス窯が一般的です。

「スカーレット」で使われている穴窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。

筆者手作りの花入れ(岩から顔を出す花をイメージ)

私は滋賀の信楽焼の窯元を何度か訪ねるうちに、信楽焼きの緋色にすっかり魅せられてしまいました。

その窯元では、蛇窯で焼いたときが、特に鮮やかな緋色(火色)が出るそうです。

その後、東京で信楽焼を焼ける穴窯はないか探し、やっと見つけることができました。

ある雑誌の「東京で穴窯焼成する陶芸家」という特集を見て、八王子で信楽焼や黒陶を焼く陶芸家の船越保さんを知りました。

筆者手作りの水差し。どこか愛嬌を感じます。

東京で信楽焼を焼ける穴窯を発見!

その後、船越さんの陶房に通い続け、1年に2回ほどのペースで、穴窯で窯焚きをしています。

船越さんが主宰する薪窯塾の仲間が手分けして、徹夜で窯焚き、火の管理をしています。

金曜の午前中に火入れをし、日曜日の夕方、もしくは月曜の朝まで焚き、その後温度を徐々に下げています。

燃料には赤松の薪を使い、1250度まで窯の温度を上げます。

1週間後の窯出しをしますが、どんな作品ができているか、窯出しが一番楽しみな瞬間です。

窯から出してみないと出来栄えがわからないところに、信楽焼の魅力があります。

私のような素人で、成型が下手でも、窯焚きの具合でうつわに自然釉が降りかかり、面白い景色が表れるときがあります。

まさに信楽焼の真骨頂です。

NHKの朝ドラ「スカーレット」で陶芸に興味を抱き、穴窯を体験したいと思われた方、東京でもチャレンジできますよ。

【東京で穴窯体験】陶芸仲間で、スカーレットの穴窯を満喫
東京都八王子市川口在住の陶芸家・船越保さん所有の穴窯(自在窯)で、船越さん主宰の薪窯塾の仲間が、年2回窯焚きをしています。NHKの連ドラ『スカーレット』の主人公と同じく、信楽焼を焼いています。私も信楽焼の持つ緋色の肌合い、緑のビードロ釉、渋く深い灰被りの青や紫の焦げに魅了された一人です。信楽焼は「炎の芸術」です。

スカーレットの緋色が、なかなか出てこない !?

でも実際には、狙ったスカーレット色のうつわには、なかなかお目にかかれないのが実情です。

でも、そこが信楽焼の面白いところで、最終的には炎と灰が織りなす偶然に委ねるしかありません。

次回はもっと素敵なうつわを作ろうと、意気込んでいます。

信楽焼をつくってみませんか!

NHKの連続テレビ小説、「スカーレット」の世界を肌で感じたいという方は、事前に船越保さんへ直接、見学や陶芸体験を申し込んでください。

船越さんのお人柄から、快く引き受けてくれると思います。JR八王子駅からバスで40分です。

連絡先・場所:無量庵陶房・自在窯・薪窯塾
〒193-0801 東京都八王子市川口町3382
電話:042-654-8972(陶芸家 船越保)

船越さんは、おもに花入れを中心に作陶しており、作品を常時Facebookやインスタグラムにアップし、更新しています。

彼の信楽焼の作品をご覧になりたい方は、下記アドレスをご覧ください。

プロの陶芸家にインタビュー~陶芸家 船越保さん【陶芸を語る】
自然と対話し、自然をそのままくりぬいたような造形美を追求する孤高の陶芸家 船越保(ふなこし たもつ)さんが作るうつわの特徴の一つが、その流れるような造形美にある。 ながく工業デザイナーとして活躍した経験から、自然に身に着いたものと思われる。 作品は大きく信楽焼きと黒陶に分けられる。自然を愛...
無量庵陶房
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筆者手作りの信楽大壺

文:小暮貢朗