成形したうつわに釉薬を施して焼けば、作品はできあがりますが、その前に作品のイメージを決定づける大事な工程があります。
うつわにどんな柄や色を付けるかでうつわの印象は大きく変わります。それが装飾です。
装飾はほどこすタイミングにより「成形後の装飾」「素焼き後の装飾」「本焼き後の装飾」と大きく3つに分けられますが、装飾方法としてはおもに次の4つの方法があります。
- うつわに絵を描く「絵付」には「色絵」「染付」「鉄絵」「金襴手」の技法
- 釉薬で飾る「灰釉」「鉄釉」「辰砂釉」「志野釉」「織部釉」
- 彫り、刻みを付ける「粉引」「搔き落し」「三島手象嵌」「刷毛目」の技法
- 異なる種類の陶土を合わせる「化粧がけ」「練り込み」の技法
基礎となるこの4つの手法を知ることで、好きな作り方を見つけたり、手法を組み合わせたりして幅広い作品を作ることができます。
では具体的にどんな装飾方法なのか、それぞれの手法をご紹介します。
うつわに絵を描く絵付には、「色絵」「染付」「鉄絵」「金襴手」
うつわに絵を描くことを「絵付(えつけ)」といいます。絵付には「下絵付」と「上絵付」があります。
下絵付は釉薬をかける前の素地に直接絵付をし、その上から高温の透明釉をかけて焼きます。
褐色になる鉄絵や藍色の染付、紅色の辰砂は下絵付です。
上絵付は一度やきものに釉薬をかけて高温で焼成したあとに、低火度釉の上絵具を使って絵柄を描き、
さらに焼きを加えたもので「色絵」と呼ばれます。
さらに金彩や銀彩を施せば、「金襴手(きんらんで)」と呼ばれる豪華な装飾になります。
釉薬で飾る「灰釉」「鉄釉」「辰砂釉」「志野釉」「織部釉」
やきものの色彩には「色絵」のように色絵具をそのままうつわに焼き付けて着色するのではなく、に釉薬に含まれる鉱物を熱で発色させる方法があります。
釉薬を単独で使うほかに、複数の釉薬を組み合わせて複雑な色合いを醸し出す手法もあります。
例えば鉛は低温で溶けるため、鉛分の多い原料に珪酸を混ぜた釉薬は艶のある鉛釉となります。
鉄や銅を呈色剤として混ぜて発色させると、黄、茶、緑の三色のやきものになります。これが「唐三彩」やそれを模した「奈良三彩」です。
高火度釉である灰釉や長石釉の場合、基礎になる釉をかけた上から別の釉薬をかける「二重掛け」「掛け分け」をして装飾効果を高める方法もあります。
彫り、刻みを付ける「搔き落し」「象嵌」「飛び鉋」
うつわの表面に凹凸をつけて装飾する方法は、すでに縄文土器からおこなわれていた手法で、様々な技法があります。
成形後のまだ生乾きのうちに直接素地に加飾をします。
- 鉋などの刃先で彫る画花文
- 文様を彫り付けた印材などを押し付ける印花文
- 櫛状の道具で施す櫛描文
- ろくろの回転に合わせて点や班文を付ける飛び鉋
といった技法がよく使われます。
異なる種類の陶土を合わせる「化粧がけ、練り込み」
素地とは異なる色調のやきものに仕上げるため、白土を泥状にしてうつわにかける「化粧掛け」という手法はあります。
鉄分を多く含む赤土粘土は焼き上がると赤黒く発色します。白くきれいに見せるためにうつわに白い化粧土を施す工夫がされました。
これに透明釉をかけたのが、「粉引(こひき)」です。この粉引を土台にして、刷毛で塗ると「刷毛目(はけめ)」といい、その他に異なる色で同じ硬さの土を2種類以上練り合わせてから成形する「練り込み」があります。
装飾のまとめ
一口に「陶芸」と言っても、さまざまな作り方があり、それらを組み合わせてオリジナリティのある作品を作ることができます。
ですが、基本的には
- うつわに絵を描く
- 釉薬を使う
- 彫り、刻みを付ける
- 異なる種類の陶土を合わせる
という4つの装飾の仕方が基本です。
作りたいものを実現するためにどの手法がいいのか、ぜひ参考にしてみてください。
これらを一通り習得すれば、自分好みの装飾方法が見つかると思います。
ライター 小暮貢朗