【趣味で始める陶芸入門】釉薬の作り方~特徴や種類、選び方のポイント

注目記事
釉薬の作り方~特徴や種類、選び方のポイント
この記事は約5分で読めます。

陶器を見ていると、表面がさまざまな色をしていたり、つるつるとした質感やザラザラとした質感など触り心地が違ったりしますよね。

これらの違いは、使っている土や焼き方による場合もありますが、ほとんどが釉薬によるものです。

釉薬は「ゆうやく」と読んだり「うわぐすり」と読んだりしますが、どちらも意味は同じで、陶磁器の表面をコーティングするためのもの。

原料を自分で調合して作ることもできるので、いろいろな原料や割合を試しながら出したい色や質感を目指すこともできます。

そんな奥の深い釉薬の基本と、大まかな種類や選び方について解説していきます!

【趣味で始める陶芸入門】陶器の装飾技法は4つ~ その装飾方法を紹介
うつわにどんな柄や色を付けるかでうつわの印象は大きく変わります。装飾方法は次の4つ。うつわに絵を描く色絵、染付、鉄絵、金襴手。釉薬で飾る灰釉、鉄釉、辰砂、志野、織部。彫り、刻みを付ける粉引、搔き落し、象嵌、刷毛目。異なる陶土を合わせる化粧がけ、練り込みなどです。この手法をを組み合わせ幅広い作品を作ることができます。

釉薬とは陶磁器の表面を覆うガラス質

釉薬とは、陶磁器の表面をコーティングしているガラス質のこと。

器に水が染み込むのを防いだり、汚れにくくしたり、器の強度をあげたり、装飾のために使われています。

釉薬をかけて焼成すると、釉薬が溶けて素地(土)の成分と融合して一体化するため、普段使いしたり洗ったりしても剥がれることはありません。

※釉薬がうまく溶けずに浮いてしまっているなど、失敗したものを除く

原料が変われば色も質感も変わりますので、釉薬を使い分けることでさまざまな見た目の陶磁器を作ることができます。

炻器や土器など無釉の焼き物もありますが、日用品として使われるもののほとんどに釉薬がかかっています。

>>やきものにはどんな種類がある? 陶器や磁器… その違いと特徴を解説

また釉薬をかけずに焼き、窯の中の灰がかかって釉薬となる自然釉(しぜんゆう)の焼き物を作っている産地もあります。

>>日本の陶磁器の産地は六古窯+25ヶ所!場所や産地ごとの特徴をご紹介

広告

陶芸用釉薬セット

釉薬の基本は「溶かす」「接着する」「ガラス化する」

釉薬を作る際に使われる原料は、釉薬を「溶かす」ためのもの、素地と「接着する」ためのもの、そして「ガラス化する」ためのものに分けられます。

もしくは、釉の原料となる「出発原料」と溶けるのを助ける「アクセル材」、そして溶けて流れるのを防ぐための「ブレーキ材」という分け方をされる場合もあります。

釉薬に必要な働きをさせるための原料を入れ、そこに着色のもととなる原料を混ぜることで色のついた器が出来上がるのです。

釉薬を自作するのであればこの基本を知っておく必要がありますが、市販された釉薬や陶芸教室に置いてある釉薬を使うのであれば、知識として頭にとどめておくくらいで問題ありません。

【趣味で始める陶芸入門】陶土の種類~知っておきたい6種の土の特徴
陶芸用の土は、細かく分けるとたくさんの種類があります。それぞれの産地で採れる土が違ったり、原料屋さんでオリジナルブレンドをしていることもあります。ですが、大まかに分類してみればシンプルなので、陶芸初心者の人にまず覚えてほしい土の種類、白土、黒土、赤土、磁器土、半磁器土、鍋土の6つをご紹介します。

釉薬を質感別に分けると大きく4種類

釉薬にはたくさんの種類があり、分類の仕方も何を基準にするかで変わってきます。

ここでは、質感によって大きく4種類に分類して説明していきますね。

透明釉

素地が透けて見えるような透明な釉薬のこと。表面はつるつるとした手触りになります。

無色透明で素地の色を生かす使い方もできれば、色のもととなる原料を混ぜて色のついた透明釉を作ることもできます。

下絵などで模様を描く場合は、無色透明の土灰釉や石灰釉を用いる場合が多いです。

貫入と呼ばれる細かいヒビが入る釉薬もあり、ヒビの模様も面白さのひとつ。

マット釉

釉薬の成分が溶けきれずに表面に細かい結晶として残り、ツヤが出ない状態の釉薬をマット釉と言います。

透明釉のようなつるつる感はなく、色も不透明。モダンな印象でもあります。

白いマット釉をベースにして顔料を混ぜれば、さまざまな色のマット釉を作ることも可能。

あえて釉薬が溶けきらないようにしているため、食器として使うと汚れが取れにくかったり汚れた部分が変色しやすいなど、使うときに気を遣った方がいい釉薬でもあります。

結晶釉

釉薬の中に存在する結晶が見える状態なのが結晶釉。他の釉薬にも結晶はあるものの、細かいので見ることはできません。

目に見えるほどの大きな結晶を作るためには、釉薬に亜鉛華を混ぜ、焼いて冷ますときに一定温度で保つなど、特別な焼き方が必要になります。

結晶のサイズや色によってさまざまな種類の釉薬が存在します。

乳濁釉

表面はつるつるに焼きあがるものの、釉薬の層の中に結晶があったり層が分かれていることで濁って素地が透けて見えない釉薬のことを乳濁釉と言います。

乳濁というものの、白っぽい釉薬だけではなく曜変天目釉などもこの分類になります。

つるつるしているため食器などの日用使いには便利。同じ成分でも焼き方によっては表面がツヤ消し状になったりと、面白い釉薬です。

【趣味で始める陶芸入門】陶器の工程~ 陶器ができるまでの流れを解説
普段目にする陶器は、すでに焼かれて完成した状態のものですが、完成するまでに様々な工程があります。土の性質上「急ぐのはNG」です。陶器ができあがるまでの工程をまとめると、土を練る、土を成形する、乾燥させる、高台を削る、乾燥させて素焼きする、絵付けをする、釉薬を掛ける、本焼きをするといった流れが一般的です。

使い勝手も考慮して釉薬を選ぶのがポイント

さまざまな種類の釉薬があるため、最初はどの釉薬を使ったらいいのか迷うかもしれません。

釉薬を選ぶポイントとしては…

  • 汚れにくく扱いやすい食器を作りたいなら透明釉
  • 染付(絵付け)をしたいなら透明釉
  • モダンな雰囲気を出したいならマット釉
  • 人と違った作品を作りたいなら結晶釉、乳濁釉

といったところになります。

もちろん、好きな色や質感があると思いますので、気に入った釉薬があるならそれを使ってもいいと思います。

また、古い食器などに使われている釉薬を自分で再現しても面白いですよ。

ただし陶磁器は、使う人のことも考えて作ることが大切。そのため、使用感なども考慮して釉薬を選ぶようにしましょう。

【趣味で始める陶芸入門】やきものの種類~ その違いと特徴を解説
やきもの種類は4つ。陶器、磁器、炻器(せっき)、土器です。①陶器は吸水性があり、温かみがある。美濃焼や瀬戸焼、益子焼、笠間焼、唐津焼が有名。②磁器は石から作られ、白くて硬い。有田焼、京焼、九谷焼が有名。③炻器は土をかたく焼き締めたもの。信楽焼、備前焼、丹波焼が有名。④土器は低温で焼かれたもろい焼き物。園芸用の鉢など。

釉薬のまとめ

釉薬は陶磁器の表面をコーティングするものなので、作品の印象を大きく左右するものでもあります。

逆に言えば、釉薬選びや釉薬掛けが作品の鍵となる可能性もあるということ。

そのため、どんな釉薬があってどのような特徴を持っているのかを知っておくことは、陶磁器を作る上でとても大切です。

市販の釉薬を使うだけでなく、本やネット上にあるさまざまなレシピを自分で調合してオリジナルの釉薬を作れば、より一層陶芸を楽しむことができると思いますよ!

文:ユキガオ